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”向付”は懐石料理の手前左に飯椀、手前右に汁椀が置かれるのに対し、その向こう側に置かれるので”むこうづけ”と呼ばれる。最近の料理屋さんで出てくる懐石料理は豪華な食事だが、本来、茶席で供される懐石は一汁三菜の簡素な料理である。
学生時代からの友人NK氏が何故か急に茶道を習い始めた。それも100km以上離れた愛知県から、野越え山越え熱心に通ってくる。
昨日もやってきて、お師匠さんのところまで送ってくれという。今日のお茶席は料理と酒が出る(昼食付きの大寄せ茶会)ので車ではいけないとのこと。とうとう彼も私と同じ、奥様に見放され飯田山中の別荘に一人でやってくるようになった。
帰り道、「茶懐石はどうだった」と訊ねると、「懐石ではなく、点心付き茶会」だったらしい。点心は中華料理で軽食のようなものを想像するが、板前つきの豪華な和食だったそうだ。茶道新入社員の彼は、いつもパシリだ。この席でも末席かと思いきや、ブービーだった。聞くと、末席の人には、お道具を片付けたり、いろいろと作法や仕事があり、新米が大事な席で粗相をしてはいけないということだ。
飯田には日本の名水百選(環境省選定)のひとつ「猿庫(さるくら)の泉」があり、5月から10月にかけての日曜・祝日などに野点が催される。以前この様子がNHKローカルで流れた。その時、当番だった方が、件(くだん)のNK氏のお師匠さんだった。佐久間良子似の魅力的なお師匠さんで、お弟子さんは殆ど爺さんたち、競争率も非常に高い。
かのNK氏は世話好きで、頼みもしないのに知らない人をよく紹介してくる。なのに、このお師匠さんだけは私に紹介しない。
「取られると困る」からだ・・・