2011年12月4日日曜日

平安の色男、恋に死す

国宝 今昔物語
(鈴鹿家旧蔵)
私の受験生時代は灰色だった。私が通っていた高校は、3年生になると”文系”と”理系”に分けてクラス編成をした。当時は”理系”に進学する女子は皆無だった。当然、ひそかに想いを寄せる彼女とも離ればなれになった。
地理や特に歴史が苦手な私は、受験選択科目に”古文”を選んだ。(当時は必須・選択を含め、7科目位の試験があった)
所属する弓道部の副顧問だったT先生はよく目をかけてくれたが、また授業中によく名指しをされた。「O君、”日置”は何と読むか?」「・・・・・・・」  今なら簡単に答えられる、弓道部だからこその(意地悪)質問だった。当時の弓道部の流派は”小笠原流”、かわいい少年には”日置流(へきりゅう)”という弓道の流派があることを知らなかった。 この先生が人気があったのは、授業の最初に始める”艶話”(男子クラスのみ、今で言うツカミ)だった。話し出すと30分、興に乗ると授業が全部それで終わった。ここでは書けないきわどい話も沢山あったが、特に印象に残っている話は、平安時代の「片思いに身を焦がす男」の話だ。ずっと私は、”徒然草”か”枕草子”の中の話と思って探したが見つからなかった。そのはずだ、"今昔物語 巻30の1"の話しだった。芥川龍之介の「好色」の原話として有名な話らしい。

ある貴族の男が、さる高貴なお屋敷の侍従の麗しき女性に一目惚れをした。かなわぬ恋に、思いつめた彼は「あの人のウ○チ」を見れば幻滅して諦めがつくと、下女が川原に捨てに来た蒔絵のオマルを奪って逃げた。
家に帰って開けてみると、代わりに香が焚きこめられていて、その奥ゆかしさと聡明さに益々恋焦がれ、狂い死にしてしまった・・・・

(当時十二単の女性は、オマルで用足しをしていた。下女が捨てにきたものは、おとりだったのだ。)