2014年2月5日水曜日

赤こんにゃくで五目豆を煮る

赤こんにゃくの五目豆飯田に和食料亭「柚木元」という店がある。飯田人の評価では中の上のランクであるが、味が関西風で好みがあい、ときどきお世話になっている。どちらかというと味が濃い飯田では珍しい。私のランクでは1か2位にランクする。
 飯田の人が上位にランクする料亭は、店構えの格式が高く味の好みがすこし濃い店が得点が高い。関西人に多いが、逆に濃い味をばかにする人がいる。これは文化の問題で、薄味だから高級というわけではない。濃くても薄くてもうまいものは美味いのだ。 ただ長寿No.1の長野県では、この濃い味とおやつ代わりのつけものをやめようという運動があったのも事実だが。

滋賀県から友人たちが来た時、柚木元で食事したことがある。女性軍が大声で「ほやほや」「ほんでにもってによ〜」などと近江弁を巧みにあやつって話していた。そこへ店の当時の若旦那(滋賀県で言う「ボン」)が、「近江弁が懐かしい」といって料理を運びながら輪の中に飛び込んできた。

話を聞くと、日本で5本の指にはいる、かの「招福楼」で修行していたという。招福楼は滋賀県東近江市(旧八日市市:よおかいちし)という、どちらかというととても田舎町になぜかある超高級料亭だ。 池波正太郎の「散歩のとき何か食べたくなって」という本にも、べた褒めで登場していて、いまは銀座にも店を出している。
 旨いものには金に糸目をつけない多い資産の私でも二の足を踏み、まだ訪れたことがない。貯金が大幅に目減りして将来に一抹の不安を覚えるからだ。だが、旨いものには全財産を叩いてでもと言う人がいる。今は小諸にすむTK女史が関西に住まいし頃、予定していたイタリヤ旅行が不成立キャンセルになり、その費用を全部はたいてこの招福楼を予約した。近江鉄道八日市駅前のビジネスホテルに泊まったが、彼女の脚の具合をみて親切にも宿の主人が送ってくれた。送ってくれたのはありがたいが、田舎のことで軽トラだった。意気揚々と玄関先で軽トラから降りたら、招福楼のお女中と見習いの若い衆が20人ほど勢揃いして「いらっしゃいませ」と頭を下げた。「あんなに恥ずかしかったことはない」と彼女は楽しそうにいつも話す。やはり、招福楼にいくには、まずベンツを発注しなければならないのだ。
 話が長くなってしまったが、どおりでこの柚木元の味、出汁がきいた薄味で、わたしらの口にあうわけだ。その話のなかで「近江八幡の赤こんにゃく」が出た。若い男の子が大好きな家内は、それからちょくちょく赤こんにゃくを柚木元のボンの土産に買ってくるようになった。

赤こんにゃく今朝玄関の野菜置き場の上で「近江八幡名物赤こんにゃく」を見つけた。    今回も土産に買って来たのに、ボンに渡すのを忘れて滋賀に帰ったらしい。
  結婚したてのころ、祭りや法事で家内の実家にお邪魔した時、大皿に山盛りの赤こんにゃくの炊いたのが出てきて「こりゃなんじゃ!!」とびっくりした。食べてみるとなかなかのもの、普通のこんにゃくよりコシが強く歯応えがある。この色はこんにゃくを作る時ベンガラを入れるのだそうだ。滋賀県のりっぱな家の柱や鴨居はベンガラを塗ってあって新築当初は神社みたいだが、まいにちピカピカに磨いて数十年すると今度は黒光りするようになる。そんな柱に塗る塗料だと思っていたので、こんにゃくの着色に使うと聞いて、二度びっくりした。
  ベンガラの主成分は酸化第二鉄、つまるところ鉄の赤錆だ。インドのベンガル地方から伝来したのでこうよばれるようになったとか。

せっかく大発見した赤こんにゃく放っておく手はない。さっそく猫ばばして五目豆を炊いた。子供の頃の五目豆はべたべたに甘かったので好きだった。いろいろとメタボ関連数値も気になるが、そんなコンプレックスがあって、いつも甘めに炊いている。前回の五目豆は、家内が甘過ぎると言ったので、今回は大さじ2杯分砂糖を控えた。何事にも奥様のいうことには逆らってはいけないのだ。
  具は、水煮大豆、赤こんにゃく、レンコン、干し椎茸、牛蒡、出し殻こんぶ、ニンジン。あれぇ、7目豆になっている。几帳面な仙人としては具を減らさなければと焦ったが、五目の意味に「種々のものが入りまじっていること」とあったので一安心。こんにゃくの赤が引き立つ逸品。