雨仰庵には玄関前をぐるっと車が回ることができるロータリーがある(ただし郵便局のオートバイに限る) その、ロータリーの中庭にニワトコの木が生えているのだが、いまは大雪で1mぐらい根本が埋まっている。そのニワトコの方から、メジロが来ると家内が言っていた。
彼女が滋賀へ帰ったので、鳥の餌やり・水やりは私の仕事になり、寝坊助も早起きしなければならなくなった。
ヤマガラ・シジュウカラには、ひまわりの種。クロジには粟と稗。ヒヨドリとメジロにはリンゴ。 下の谷川も雪で埋まったので、深さ10㎝ほどの発泡スチロール製容器で水場も作った(水浴びにはちょいと深すぎるが) これが、10cm底まで完全に凍っていて割ることもできない。おまけに、ずっと真冬日が続くので昼も氷は溶けない。ということで水は諦めてもらうことにした。
リンゴはヒヨドリが独り占めして、メジロは怖くて食べることができない。最も多いとき一度に3羽のヒヨドリがベランダに集まった。そこで半分、メジロのために、ベランダと反対側、ロータリーのニワトコの木にリンゴを刺してやった。が、待てどもまてどもメジロは来ない。
ふと鳥寄せのことを思いついた。私の口笛ではヤマガラもシジュウカラも来ないが、この前、大枚を叩いて買ったiPhoneの「野鳥の鳴き声図鑑」で呼べるのではないかと”雨仰庵の鳥”に登録済みの「メジロ」をクリックする。
最初は「さえずり」を再生・・・来ない。図鑑の用語解説によると、さえずりとは「繁殖期にオスがメスに求愛するときや、縄張を宣言する時の鳴き声」・・・ 「この大雪の寒い中、恋もへったくりもないわなぁ」と地鳴きに切り替える。同じく用語解説によると、地鳴きとは「さえずり以外のふだんの鳴き声」
すると、向いの家のヤマグワの木で同じような「チ〜ヨチ〜ヨチヨチヨ」という鳴き声がした。その2〜3分後、ニワトコに刺したリンゴにメジロが来た。まさかと思っていたのでカメラを持たず、何枚か遠目でiPhoneでパチリ。逃げる様子もないので、慌てて家の中に転ぶようにしてカメラをとりに入る。雪と泥で靴がくちゃくちゃなので、アメリカ式はやめて今日はちゃんと靴を抜いで部屋に上がった。
カメラを持って戻ってきたら、まだ夢中になってリンゴをつついている。メジロはどうもおっとりしているらしく、結構近くで写真を撮らせてくれる。外はマイナス1℃寒いうちにはいらないが、リンゴを刺すだけのつもりだったので、気が付くと部屋の延長でセーター姿だった。
余談になるが、私は清水(現静岡市)生まれ。 温暖な気候の静岡県人は、みな寒がりだ。中学3年のクラスは平均点が学年最下位で、社会科の教師から「この組はポーッと清水だ」と揶揄されたのを、いまだに覚えている(Port Shimizu:清水港の洒落←気候が暖かで頭もポーッとしているという意味) やな教師だった。そこで一念発起、人間は環境に適応するということを証明し、私は、いまや寒さに一番つおい(静岡弁:強い)静岡県人となったのである。
ご機嫌で撮らせてもらったのでセーターでも寒さを感じず、もうこれで今日は何もしなくてもいいやと思う。手描室自主トレもピアノの練習も昼から全部サボって、ボーっと清水になった。
居間でほっこらしながらふと外を見ると、ヒヨドリのすきをついて、ベランダでメジロがリンゴをつついている。見た目と違って、なかなか、はしこくちゃっかりしたやつである。