2013年5月12日日曜日

手描室「ヤマブキ」

手描室「ヤマブキ」七重八重花は咲けども山吹の
     みのひとつだになきぞかなしき

  [後拾遺集に醍醐天皇の皇子・中務卿兼明親王が詠まれたもの]

太田道灌が鷹狩でにわか雨にあい、みすぼらしい家に駆け込み「急な雨にあってしまった。蓑を貸してもらえぬか。」と声をかけると、思いもよらず年端もいかぬ少女が出てきた。そしてその少女が黙ってさしだしたのは、蓑ではなく山吹の花一枝だった。花の意味がわからぬ道灌は怒って雨の中を帰って行った。
 あとから、この歌のことを家来に聞き「実の一つもつかない」と「蓑ひとつない」のたとえを知り、自分の不明を恥じ、歌道に精進したという「山吹伝説」

私が住んでいる山の中に山吹がたくさん自生していて、わが家でも、ヤブの薄暗がりを背景に見事な「山吹色」がかがやいている。

先週の金曜日は「手描室」、庭の山吹を手折って出かけた。黄色の花はむずかしいと言われたが、確かに「注意をひくはずの色」なのに、花びらに色を入れても、ちっとも前に出てこない。
 花びらが散る前に、花だけでもと教室で色付けし、今日、茎と葉を仕上げた。

私がもたもた描いているうちに散ってしまう花が多いのに、そんな心配をよそに、この山吹いまだに花も葉もピンピンしている。華奢な花にみえるが、実は芯が強い花だった。ただ、花びらの重なり方が「右回り」のものと「左回り」ものがあり「いい加減さ」も、持ちあわせている。このいい加減さが、また良い。