雄勝硯と新調の毛筆 |
先日書いたが、他人の不幸は楽しいが、いざ自分の不幸となると悲しいものだ。しかたがないので、このまま続行、昨夜刷り終わった。刷ったあと、宛名書きをして投函する予定だったが、その気力も失せ、ふて寝をした。
11月の会津別れの一本杉ツアーで、YAさんから「雄勝硯」をいただいた。日本の硯の生産のほとんどが、石巻市雄勝産なので、子供の頃使っていた私の硯も雄勝硯だという。
せっかくなので、この年賀状の宛名書きのときに、おろそうと思っていた。
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墨をすりだしたらお香のような、いい薫りが部屋にただよい昔の記憶が鮮明によみがえってくる。
小学校低学年のとき、親父が知り合いの栗田校長(書道の先生だった)に頼んで、書道部に入れてくれたときが、墨をすった最後ではないか。あの頃は、放課後遊びたくてウズウズして、すぐにやめてしまった。いま思えばちゃんと習っておけばよかったと思う。
飯田に引っ越して、年賀状10枚にしぼってから、宛名は下手でもなんでも筆で書くときめた。が、筆といっても”筆ペン”というやつで、本物の毛筆で書くのも、中学以来のことだ。
先日の富士五湖ツアーでよった忍野の絵手紙美術館の池田邦夫先生は「下手でいい」「下手がいい」と言っておられる。たしかに、一文字一文字を見ると”ド下手”にみえるが、勢いがあってバランスがいい。文字列というより絵になっている、俗にいう「ヘタウマ」というやつだ。芸大の書道科なのだ、わざと下手に書いているに決まっている。私のは、上手に書こうと思ってうまく書けない”ヘタヘタ” 。
おまけに書き損ないをして、数少ない年賀状が一枚パーになった。家内の名前の下の漢字「枝」の木偏まで書いたら、筆が勝手にうごいて「様」になってしまった。ここまでは紙を貼って修正したが、先方の奥様の名前を書いている時、「里」と書いているつもりが、いつの間にか「野」になりかかっている。筆は魔物だ。
毎年のことだが、版画の出来と宛名の順番は「絵にうるさい順」だ。誰かは言えないが一番絵にうるさくない人宛が、一枚出せなくなったm(__)m
最近手描室のS先生が上位に入ったが(なにせ絵のお師匠様)、以前から長野のビューティBY氏宛の賀状が一位。彼も毎年版画の年賀状をくれ、絵も上手。以前お宅を訪ねたおり、懐かしい年賀状を見せてくれた。私が何十年もまえに出した版画の年賀状を全てファイルしてくれているのだ。私の手元には一枚も残っていない。反省して、この5年ほど保存するようになったが、やはり大事にしてくれる人には、一番できの良いやつを送りたい。
今年はYAさんのおかげで、完ぺきな「スロー(刷ろう)年賀状」になった。この硯もずっと大切に使わせてもらおうと思う。