古典落語に「茗荷宿」という、滋賀県大津を舞台にした噺(はなし)がある。昔から「茗荷を食べると物忘れをする」と言われているが、大津宿(おおつじゅく)はずれの、はやらない旅籠(はたご)の夫婦が、泊まり客から帳場で預かった200両の大金。客を茗荷料理攻めにして、それを忘れさせて、だましとろうと作戦をたてる。
作戦は見事成功かと宿の主人夫婦は喜んだのもつかの間、客は最後に預けたことを思い出す。しかし宿賃を払うのを忘れていく、というのが落ち。
いま茗荷が旬、産直市場で300gの袋が100円だった。恐ろしい山の神のことを忘れたい貴兄に、ぐうたら亭主のことを忘れたい貴女に、茗荷の甘酢漬けをおすすめする。
茗荷の甘酢漬け
この甘酢は作りおきができ、他の酢物料理も、カドのとれたまろやか味に仕上る。おなじみチョウキチ飯田流家元IGさんに教えていただいた。チョウキチは副業で、本業は優秀な板前さんだ。